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「...ここは？」

意識が戻ったフジは、視界に入ってきた見覚えのない一室に首を傾げた。
その疑問はすぐ解ける事となる。

フジの意識が戻った事を知った面々が、次々と室内に顔を出す。

体を起こしたフジは、室内に現れた全員を見回した。体の方は自由に動く、
体の動きを鈍らせていた香の効果は完全に消えたようだ。

「ここはイモビクティーピーク王国の、王城の一室だ」　　　　　　　　
　フジの疑問にテヅカが答える。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
「イモビクティーピーク王国？どうしてそんな所へ？」　　　　　　　　
　フジは首を傾げる。自分がいる場所がわかったのはいいが、
何故そんな所にいるのか疑問がました。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　「海に飛び込んだ事は覚えているか？」　　　　　　　　　　　　　　　
　テヅカが問うとフジはすぐに頷いた。意識もはっきりとしているようだ。
「うん...、僕達生きているんだね」　　　　　　　　　　　　　　　　　　
飛び込んだ時は、死ぬかもしれない。そう覚悟した。　　　　　　　　　
　「あぁ、運が良かったんだ。海へ飛び込んだ後、海面から洞窟を見付けて
そこへ避難した。その海の洞窟の入り口が、イモビクティーピーク王国に繋がっていて
、そこからこの国へ入った。　　　　　　　　　　　　　　　
「それで何故お城へ？」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
逃げ込んだ洞窟がイモビクティーピーク王国の領地に繋がっていたkらといって、
その国の城にいる理由にはならない。立ち入ってはいけない場所に入ったか何かして、
不法侵入で捕まったのだろうかとも思ったが、寝かされていた場所はどうみても牢屋には見えない。

「ライズメア王国で助けた少女の事を覚えているか？」　　　　　　　　
　「...覚えているよ。それがどうかしたの？」　　　　　　　　　　　　　　
突然何故その話が出てくるのだろうと思いつつ、フジは答えた。行き掛りで助けた後、
彼女を安全な場所まで送った事は記憶に新しい。　　　　　　
「彼女は、この国のお姫さまだったんだ。俺たちが海に飛び込んだ後、ユキムラ達は、
偶然彼女と再会したらしい。彼女の助言で俺たちの居場所に当たりを付けたユキムラ達と
合流した後、俺たちはこの城に招き入れられたんだ」　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　「そうだったんだ...」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　「どうした、まだ気になる事があるのか？」
　　　　　　　　　　　　　
　テヅカの説明に、フジは何故この城にいるのかを納得したようだが、
その表情には憂いがある。

「テヅカ...」

何かを決意したように、フジはテヅカの名を呼ぶ。

「何だ？」

「僕は君に...、君たちに隠している事がある。その事についてリョーマ君から何か聞いた？」

その事をテヅカ達は知ったのだろうか、知ったら彼等はどう言う態度を取るのだろうか、
そう言った不安が全くないわけではない。

「いや...、何も聞いてはいない」　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　「そう.........」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　「フジ、お前が隠していると言う事と、この襲撃とは何か関係があると、お前は考えているのか？」　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　「もしかしたら、とは思っている。その事を言う前に、この首輪をどうにかしたいんだけど...」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　「お前の魔力を封じていると言うその首輪をか？」　
　　　　　　　　　
　「うん。二度目の襲撃の時に思ったんだけど、多分これが僕の居場所を相手に教えているんだと思う」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「その首輪がか？」　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　「多分ね。これを作った魔術師が追跡の為の仕掛けをしているんだと思う。
そうでないと逃げ出してから追っ手に居場所がすぐにばれた理由が説明席ない。
この首輪を外さない限り、この城を出た後すぐにまた襲撃されるかもしれない」

「それは厄介な代物だな」

その言葉に、その場に居た全員が納得した様な表情をする。

「...リョーマ君は、自分にはこれは外せそうにないって言ったけど、ユキムラはどう？」

この手のアイテムを外せるとしたら、一番はこれを作った魔術師本人だが、
それは望めない。そうなると、この仕組みを理解できる才能ある魔術師に
解除を頼むしかないのである。リョーマは自分には無理だと言った。そうなると、
この場にいる者で魔術に精通しているのはユキムラしかいない。彼に解除できるなら
それに越した事はないのだが。

「...これは、思ったより複雑な代物だな。俺にも解除はできそうもない」

フジの側に屈み込んで首輪を調べていたユキムラが残念そうにそう言った。

「...実は、これを外せそうな魔術師に、一人心当たりがあるんだけど」　　
戸惑いつつもフジはそう言った。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
「それならその魔術師の所へ行ってみるしかないね」　　　　　　　　　　
手に負えない代物の事で悩んで時間を潰すよりも、そうした方が早いのは確かだ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　「うん。ユキムラは、移動の魔術を使う事は出来るよね？」
　　　　　　
　「出来るけど...」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
一度も訪れた事のない場所に飛ぶ事は出来ないのだ。それはフジにもわかっているはずの事。
いったいどこへ飛べと言うのだろうと、ユキムラはその真意をはかりかねていた。　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　「...他人のイメージした場所へ飛ぶ事は出来る？」
　　　　　　　　　　　
迷いつつもフジはそう聞いた。優れた魔術師は、他人の思い浮かべた場所をイメージとして
受け取り、その場所へ飛ぶ事が出来る。　　　　　　　
　「やってみた事はないけれど、出来るんじゃないかなとは思う」
　　　　
　「この場にいる全員を連れて、それをやってもらいたいんだけど...」　　
　「大丈夫じゃないかな？幸いもう一人魔術を使える人間がいるし、協力してもらえば何とか...」　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　「それじゃあ、僕がイメージを思い浮かべる場所に飛んで欲しい」
　　　　
フジはユキムラにそう頼んだ。

「わかった。その前に、お姫様に城を出る事を言っていかないとね」　　　
ユキムラはそれを承諾した。そして外にいる兵士に、アンに連絡して彼女を呼んで
欲しいと頼んだ。助けてもらっておきながら、何も言わずに消えるわけにもいかないだろう。

「リョーマ君、君が僕に頼みたい事って言うのが何なのかを、今聞いておいてもいいかな？」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　次にフジは、リョーマの方を見てそう聞いた。
　　　　　　　　　　　　　
「ラティオダンク王国に渡りたいんだ。ヘキサングラー王国から、船に乗りたいと思っているんだけど
、今向こうへの船が出ていないらしいんだ。それで船を出してくれるように、あんたから
口添えして欲しいんだけど」フジならそれが出来るとリョーマはふんでいる。滅びたアドレッセント王国と、
ヘキサングラー王国は友好関係にあった。その事をリョーマは知っている。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　「わかった。やってみるよ」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　リョーマの頼み事に、フジはそう答えた。

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一行は、部屋に現れたアンに助けてくれた事への礼を言うと、すぐに出発する旨を告げた。

フジは自分の杖をテヅカに持っていて欲しいといって手渡す。

その杖には魔力を封じる効果が秘められている。ユキムラの邪魔になってはいけないと思い、
テヅカに渡した。

「ユキムラ...」

フジが名を呼ぶと、ユキムラはフジを抱きしめる

「...言っておくけど、飛ぶ場所のイメージを視る為に必要な事だから」

渋い顔をしているテヅカに、ユキムラがそう念を押す。相手に触れる事で、
そのイメージを読み取るための行為。この程度の事も気になると言うのなら、
さっさと自分の想いを伝えればいいのにと、ユキムラはテヅカの態度に
じれったさを感じていた。こんな風に感情を思てに現すテヅカも珍しいので、
それはそれで見ていて面白いと思うのだけれど。

フジは目を閉じて、飛びたい場所のイメージを思い浮かべる。

「...視える？」

イメージがユキムラに伝わっているのかどうかを確認する為に、フジはその事を尋ねた。

「視えるよ」

フジに触れる事で、ユキムラには、今から飛ぶ場所の映像のイメージが視えている。
ユキムラはその場所へ飛ぶ事をイメージしながら、自分自身に問った。こう言う魔術の
使い方はした事がない。でも出来ると言う気がした。

初めての試みだったが、ユキムラは見事全員を連れてその場所へと飛んでいた。

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