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プライム王国、手塚の部屋。

その日もオオイシとエイジの二人は、そこでテヅカが帰るのを待っていた。

テヅカが城から姿を消して、今日で六日目になる。

「テヅカ、今日も帰ってこにゃいのかな～」
　　　　　　　　　　　　　　
エイジは一つ溜め息をついてからそう呟いた。いつもの彼らしい溌剌さは影を潜め
、どこか元気がない様子だ。　　　　　　　　　　　　　　　　　
ここ数日部屋に閉じこもってばかりの日々を過ごしている。元々外出が好きでじっと
しているのが苦手なエイジは、その事にストレスを感じ始めているようだ。
それでもこしているのは、テヅカ達を思う気持ちがあるからだろう。

エイジとは違う意味で、オオイシもストレスを感じ始めている。いつまで二人の
不在を誤魔化せるのだろうかと言う不安感が、日に日に強くなっていくのだ。

「まだわからないさ...」

自信があって言っていると言うよりは、自分自身に言い聞かすようにオオイシが
エイジの言葉に答える。

「そうだよね...」

エイジも頷くが、心ここにあらずといった感じだ。

テヅカが帰ってくる事を望みながら、今日も帰ってこないのではないか、二人は
そんな風に思い始めていた。

二人の様子が周囲にも影響を及ぼすのか、静まり返った部屋はどこか陰鬱としている。
諦めムードな二人を象徴するかのように。

そんな室内の雰囲気が変わったのは、突然の事だった。テヅカの帰りを待ち詫びる
二人の前に異変が起こったのだ。

「エイジ！」

エイジよりも先にその事に気付いたオオイシは、エイジの腕を掴み自分の方へと引き寄せた。

「？にゃっ...」

オオイシに腕を引かれ、エイジもその異変に気がついた。部屋の中央に突然光の柱が
立っていた。そう思ったのも一瞬の事で、光はすぐに消えた。そして、光が消えた後には
二人の人物がその場所に佇んでいた。

「テヅカ！」

期間を待ち詫びていた部屋の主の姿が目に入り、オオイシは思わず声を上げる。

「二人とも帰ってきてくれて良かったにゃ～」

テヅカとフジの姿を見たエイジは、二人の方に駆け寄ってきた。そして勢い良くフジに
抱きついた。その衝撃に、フジはバランスを崩しかけたがなんとか持ちこたえた。
そして困惑した表情をエイジに向ける。

「エイジ君、あの...？」

「エイジって呼び捨てでいいにゃ。俺もフジって呼び捨てにしていい？」

「うん...」

「俺、すっごく心配したんだよ。フジが城を出て行ったって聞いてさ。でも帰ってきて
くれて本当に良かった～」

「心配かけてゴメンね」

まだ会ってまもない自分の事を本気で心配してくれている様子のエイジに、戸惑い
つつもフジはそう言った。

「もう黙って出て行ったりしにゃいでね！」

「うん...」

にっこりと自分に向かって笑顔を見せるエイジに、フジも返事を返す。甘え上手なエイジの
仕草に戸惑いつつも受け入れる事を選んでいた。　　　　無条件に向けられる好意に、
フジの表情も自然と柔らかくなる。帰る事を迷っていた心が、屈託ないエイジの態度で
解されたのが感じられた。　　
　勝手に出て行った自分を、テヅカ以外の人がこんな風に受け入れてくれるとは思って
いなかったのだ。

「オオイシ、苦労をかけたな」

部屋に佇みうっすらと目尻に涙を浮かべているオオイシに、テヅカが声をかける。

「テヅカ...。今日帰ってきてくれて良かった。後何日誤魔化せるかと...」

テヅカの不在の間、オオイシはエイジと共にその帰りをずっと待っていた。留守の間張り
つめていた気が、一気に緩んだ様子で肩から力が抜ける。

「遅くなってすまなかった。留守中変わった事はなかったか？」

「何もないと思う。今のところ二人の不在も周囲には知られていないはずだ」

テヅカの問いにオオイシはそう答える。ほとんどこの部屋に籠りきりの毎日だったが、
外へ出た時は周囲にも気を配っていた。ここ数日、城内でおかしな様子は見られなかった。

「俺とオオイシが頑張ったからね！」

突然二人の会話にまざりエイジが誇らし気にそう言った。

「あぁ、感謝している」

エイジの方に視線を向けて、テヅカが感謝の意を述べる。その様子を見ていたオオイシは、
テヅカの衣服についた争いの跡に視線を奪われた。テヅカの帰還を喜ぶあまり、
細かいところまで目が届いていなかったのだ。

「テヅカ、どこか怪我でもしているのか？」

「心配する程のものじゃない。かすり傷程度だ」

心配するオオイシに、テヅカはそう言った。別に安心させようとして嘘を言っているわけではない。
実際テヅカの服についた血痕は返り血がほとんどで、自信が酷い怪我を負っているわけではない
。全く無傷とは言えないが、軽傷ばかりで放っておいてもすぐに治るだろうと思われる。

「そうか...」

道中でのテヅカの苦労が忍ばれるようだ。オオイシは、その事に心が痛んだが、テヅカは別段
怪我の事は気にしていないようである。

多少の怪我等フジを取り戻す事に比べれば、テヅカにとっては些細な事。

４人がそれぞれ再会出来た事に思いを馳せている。本当ならこの後、お茶でも飲みながら
この数日間の事をゆっくりと語り合いたいところだが、そうもいかなかった。

突然部屋に響くノックの音。

室内に緊張が走った。

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