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ライズメア王国が水が豊かな国である。　　　　　　　　　　　　　　　　
中央にある城の回りを囲むように泉があり、そこから引かれた水が町中に張り巡らされた水路を通ってあちこちに流れるようになっている。　　　　
遠くから見ると、湖の中央にしろが浮かんでいる様に見えるのもどこか幻想的である。

ライズメア王国に入ったテヅカとフジは、真っ先に宿屋へと向かった。テヅカはプライム王国の隣国にあたるこのライズメア王国にも何度か訪れた事があるらしく、宿屋の場所も把握しているようである。宿屋へ向かったのは、今日泊まる場所を確保すると言う目的もあるが、街道の時と同じように、ここでも情報収集をする為。北を目指すと言う目的がある以上、美しい町並みを眺めている余裕はない。情報収集に時間を費やしているので、普通に旅するよりも目的地に辿り着くまでに時間を要する。　　　　　
城下町の中にある宿屋は、街道から町へ入ってうぐに見つかる見晴しのいい場所に建っていた。二人はその中へと入っていく。　　　　　　　　　　
そこの宿屋も街道沿いにあった宿屋と同じで、一階が酒場、二階が宿泊部屋へと言う作りになっていた。どこにでもある一般的な宿屋の作りをしている。宿に泊まる為の手続きをする為に、二人が奥にいる主人の方へ歩いていこうとすると、一つのテーブルからテヅカに声がかかった。　　　　　
「やぁ、やっぱり来たね」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　「ユキムラ.....」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　ユキムラと呼ばれた青年は、テヅカに対してにっこりと笑いかけた。　　
　親し気な様子から、テヅカの知り合いらしいと言う事を、フジは悟。
そして、ユキムラと呼ばれた青年の他に、そのテーブルにもう一人いる事に気が付いた。ユキムラとは対象的に、その人物は鋭い眼光でテヅカを睨んでいる。知り合いなのにどうしてそんな鋭い眼光を向ける必要があるのだろうかと思いながら、フジはテヅカの方をチラッと見た。　　　　　　　　
　「.......知り合い？」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　「あぁ、そうだ」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
フジが聞くと、テヅカはあっさりとそう認めた。　　　　　　　　　　　
　「はじめまして、俺の名前はユキムラ、そしてこっちがサナダ。宜しく」
二人の会話を聞いていたユキムラが、フジに向かって声をかける。　　　
　「はじめまして、フジです」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
フジもにっこりと笑って、ユキムラにそう返した。　　　　　　　　　　　
「フジ、宿の受付を済ませて、先に部屋へ行っていてくれないか？」　　
　まるでその場から、フジを追い払うかのように、テヅカは言った。　　　
　事実そうなのだろう。　　　　　　

お互いに利害が一致しているのだ。

「確かにその通りだが」

迷った末、テヅカはそう答えた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　「決まりだね。サナダ、俺たちも今日はここで宿を取ろう」　　　　　　
　ユキムラはサナダにそう告げた。明らかに不満そうではあるが、サナダは渋々その決定に従う。その様子からも二人の力関係が垣間見えるようだ。サナダとユキムラも宿の受付を済ませると、テヅカと一緒に二階へと上がる。テヅカは宿の主人に聞いた自分達に宛てがわれた部屋へ、サナダとユキムラを連れていった。

「........どうしたの？」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
テヅカ以外に、先程の二人も一緒に居るのを見て、どうしてそう言う事になっているのかと、フジはテヅカに尋ねた。　　　　　　　　　　　　　　
「この二人も、旅に同行する事になった」　　　　　　　　　　　　　　
　テヅカはあっさりとそう言ったが、それ以上の事を不二に言うともりはないらしい。３人が知り合い同士だと言うのはわかるのだが、どう言う関係での知り合いなのかフジには全くわからなかった。どう言う理由で同行する事になったのかも。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　「そう言う事なんで、宜しく........」　　　　　　　　　　　　　　　　　
　ユキムラがフジに笑顔でそう言った。サナダは黙ったままで、特に何かを言う気配はない。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　「あの...、二人とも、剣士なんですか？」　　　　　　　　　　　　　　
　テヅカが何も教えてくれそうにないので、自分で二人についての情報を集めようと思い、フジはユキムラに聞いた。二人が同行する事に依存はないけれど、仮にもともに旅をしようと言うのだから、どう言う職業なのかと言う事くらいは知っておくべきだろうと思った。　　　　　　　　　　　
　フジが魔術師であると言う事は、その格好から二人に知れているだろうと思われるので敢えて言う必要はない。二人の職業もその格好から知れようと言うものなのだが、本当にそうなのだろうかと言う疑問をフジは持った。二人とも腰に剣を携帯しているし、見た目は剣士と言った感じなのだが、何か違和感を覚えたのである。何故そんな風に思ったのかと聞かれれば、勘としか言い様がないのだが。　　　　　　　　　　　　　　　　　　
「サナダはそうだ。そうしてユキムラは、剣士でも有り魔術師でもある」
フジの勘の良さに内心舌を巻きながらも、テヅカはそう答えた。別に隠す様な事ではないし、黙っていても一緒に旅をすれば何かあった時にその事を知る事になるだろう。旅の道中で何かがあった折に、ユキムラが魔術を行使する機会もあるだろう。テヅカの言葉を聞いて、フジは自分が感じた違和感に得心がいった。ユキムラがどれ程の魔術の使い手なのかはわからないが、かなりの力を持っているように感じられるのだ。

魔法戦士と言うと聞こえがいいが、大抵はそのどちらの実力も中途半端でたいしたものではないと言う場合が多いが、ユキムラはそうではないだろとフジは感じていた。これも勘としか言い様がないのだが。

「心強い味方が出来て良かったね」

フジはテヅカに向かってそう言った。

「そうだな......」

テヅカはフジの言葉に頷きはしたが、本当にそう思っているのか、その心情ははかり知れない。どう言う知り合いなのかは知らないけれど、何か複雑な事情がありそうである。

簡単な自己紹介を済ませた後、サナダとユキムラは自分達の部屋へと戻っていった。

テヅカはフジを伴って、一階の酒場へと向かう。ユキムラから知っている情報を既に提供してもらってはいたが、他に何か新しい情報があるかもしれない。根が真面目なテヅカは、念のため、自分でも情報収集をすると言う事を怠るつもりはないのだ。

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