試合会場に着いたリョーマは、観客席から試合を観戦していた。今行われている大会は、
割と大きめの大会で人気もある。チケットは既に完売していたが、時分のコネを使ってリョーマは
何とか試合会場に入る事が出来たのだ。

試合の内容自体は悪くないと思うが、他に目的があるせいか集中して見ている事が出来ない。
早く試合が終わってくれないだろうかと思ってしまう。気持ちが急いているせいか、いつもよりも試合が
長く感じられた。

やっと試合が終わりと告げた。健闘をつくした選手同士がお互いに握手を交わしコートを後にする。
それを見たリョーマは、選手の控え室へと向かった。普通なら関係者以外入れない場所だが、
ここも自分のコネを使って無理を通した。ここに会いたい人物がいるのだ。目的の人物の控え
室に行く前に、リョーマはその人物を見付けた。思わず駆け寄ろうとした足が止まる。
その人物は一人ではなかった。

そして、一緒に居たのは。

「何で...」

リョーマは思わずそう呟いていた。二人はリョーマに気付いていないようだ。少し話しをした後、
リョーマが会いに来た人物と話しをしていたもう一人の人物がその場から立ち去っていった。
それを見計らってから、リョーマはその人物に近付いて行った。

「手塚部長...」

本当は元部長で、今はもうそう言う呼び方をしなくてもいいのだが、リョーマは思わず
そう呼んでしまった。

「越前か、久し振りだな」

お互いにここ数年顔を合わせた事はあまりない。時々同じ大会に出ている事もあるが、
話しをした事はない。手塚の試合をリョーマがわざわざ観戦に来た事は、今まで一度も
なかった。だから珍しいと思っているのだろう、手塚はリョーマの真意を計るかのように黙っている。

「部長に聞きたい事があるんだけど」

「何だ?」

「さっき、ここで話していたよね」

リョーマがそう言うと、手塚はポケットから一枚の紙切れを差し出した。

「俺が教えられるのは、これだけだ」

そう言って、手塚はリョーマにメモを渡した。そして、そのまま控え室へと入っていく。
リョーマの手には、手塚から渡されたメモがある。メモには、ある日時と場所が示されていた。

これが手掛かりである事は間違いない。

その書かれた日時に、その場所へ行く事をリョーマは決めた。

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