リョーマが部屋に戻ると、先に風呂に入った不二は、ベッドの横に敷かれた布団の上で眠っていた。
先日、騒動に巻き込まれてから、まだそんなに日が経っていないし、疲れているのだろうと思った。
だから、自分が戻るまで起きて待っていてくれなかった事を、責める気はなかった。
     
不二の寝顔を見ながらリョーマは、今日の不二との会話を思い出していた。
昨日リョーマが部活の帰りに、家に寄るように誘ったのだ。
     
古典でわからないところがあるから、明日家に来て教えて欲しいと言うと、不二はすぐに
良いよと言う返事をした。それに気を良くしたリョーマは、翌日学校は休みなのだから、
その後家に泊まっていくように勧めた。その事に対して不二は、迷惑ではないのかと、
そうする事に難色を示した。それをリョーマが強引に押し切ったのだった。結局不二がそれに頷いて、
本日に至っている。
                       
約束通り勉強を見てもらった後、話が何となく先日の事件の事に向かっていった。
                             
 先日、青学テニス部は、豪華客船で行われるエキシビジョンマッチに招待された。
顧問の竜崎先生の勧めもあって、メンバーはそれに参加する事を決めた。そこまでは
良かったが、実際に招待に応じてみたところ、観光気分で乗り込んだ部員達の予想とは
裏腹に、とんでもない方向に自体は転がっていったのである。結果的には詐欺まがいの
事件に巻き込まれ、最終的には大海原を救命用のボートでさまようはめになった。
皆で力を合わせてなんとか無事岸辺にたどり着いた時には、これで終わったのだと言う思いで
いっぱいだった。後から聞いた話によると、その事件は青学のメンバーもよく知っていると
ある人物が警察に通報して解決したのだと言う。平穏な日常生活を取り戻した今となっては、
それも思いで話の一つである。
                               
 リョーマが開いた教科書やノートを片付けている間、不二はただじっとその様子を見ていた。
最初はリョーマもそん事を気にしてはいなかったのだが、不二の視線に何か含むものを感じて、
声をかける事にした。
    
 「...どうしたんスか?不二先輩」
                   
 「ゴメン、気が散った?」 
                    
 「別に...。ただ、何でそんなにこっちを見ているのかなと思っただけ

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